恋愛リアリティー番組とミニマリズム
どの配信プラットフォームでも恋愛リアリティー番組は廃れない、むしろ加熱している。
僕は正直、普段そういうものをほぼ見ませんが、幾つものフィルターを通って入ってきた「世間が熱中している番組」をたまに見ることがあります。
見ると言っても、最終話を見つつ気になる箇所だけツマむかんじでチラッと見るくらいですが…
まぁ恋愛リアリティー番組自体が好きではないのでしょう。
じゃあなんで見るのかというと、「何かと話題になっている」ものには理由がある、その理由を知りたい、気になるからです。
時代をさかのぼると、令和以前でも恋愛リアリティー番組は存在しました。
例えばあいのり、テラスハウス。
当時から僕はあまり興味がなかったんですが、周りは熱中していたことを鮮明に覚えています。
そしてその当時より、確実に「恋愛リアリティー番組熱」が加速していることが分かる。
もちろん、コンテンツのクオリティが上がった・配信媒体の拡充など、複数要因はあるでしょう。
しかしもっと本質的な、人間の性質が関係しているのではと思っています。
それが「恋愛のミニマル化」なんじゃないかと。
ここでいう「恋愛のミニマル化」とは、恋愛をしないことではありません。
恋愛から、時間・失敗・曖昧さ・感情的コストをできるだけ取り除こうとする傾向を指します。
恋愛のミニマル化=恋愛のアウトソーシング
恋愛リアリティー番組を観るとき、私たち自身は恋愛をしていません。
しかし、不思議なことに、ドキドキし、応援し、嫉妬し、別れに胸を痛める人もいるでしょう。
実際に涙を流したりするのも珍しくない。
「自分は何も失っていないのにも関わらず」です。
告白もしない。振られもしない。時間も使わない。
それでも、番組内の恋愛が生み出す「感情」だけは受け取ることができます。
つまり、恋愛という行為そのものを、自分ではなく出演者に代行してもらっているのです。
恋愛リアリティー番組は、恋愛を疑似体験しているというより、恋愛という営みを第三者へ委託するサービスに近い。
自分は感情の消費者であり、出演者は感情の生産者ということです。
スポーツ観戦が自分でプレーする代わりに熱狂を味わうように。
ゲーム実況が自分でプレーしなくても達成感や驚きを共有できるように。
恋愛リアリティー番組は自分で恋愛をしなくても「恋愛の感情だけを味わえる」コンテンツだともう気づいているはずです。
だから私たちは、自分では恋愛をしていなくても、または自分の恋愛がうまくいっていなくても、外部で恋愛を楽しんだ気持ちになれるし熱中する。
恋愛の「所有」から「サブスク化」へ
かつて恋愛は、自分自身が経験するしかありませんでした。
誰かを好きになり、誘い、期待し、傷ついて、ときには失恋する。
その一連のプロセスを引き受けることこそが、恋愛だったのです。
しかし現代ではその前提が変わった。マッチングアプリがその例でしょう。
相手は条件で検索され、違和感があればすぐに次へ進む。恋愛も効率化の波から逃れられません。
「無駄な時間は使いたくない、できるだけ失敗したくない」
それはごく自然なことです。
一方で、人は恋愛そのものへの興味を失ったわけではありません。
もっと言えば、人は昔から他人の恋愛や人間関係を覗き見したい生き物。
友人の恋愛話が盛り上がるのも、芸能人の熱愛報道がニュースになるのも本能です。
恋愛リアリティー番組は、この人間の根源的な好奇心を、ギュッと固めてエンタメ化したコンテンツです。
音楽をCDで所有する時代から、Spotifyで好きな曲を再生する時代へ変わったように、恋愛もまた「自分で経験するもの」から、「必要なときに楽しむコンテンツ」へと姿を変え始めている。
恋愛リアリティー番組が流行っているのは、恋愛好きが増えたからではありません。
恋愛を"所有"しなくても、恋愛という体験の面白さだけを享受できる時代になったからなのだと。
僕がほぼ見ない理由
ここで一旦、自分の話に戻します。
冒頭でも言った通り自分はほぼ恋愛リアリティー番組を見ません。
妻も同じくです。
なぜかというと、他人にあまり興味がなく恋愛体質ではないからだと思っています。
恋愛体質が良い悪いという話ではなく、あくまでその人の傾向だということ。
過去の経験や考え方が大きく関わってくると思います。
だから言い方を変えれば、恋愛体質なほど他人の恋愛が気になり、番組の視聴率も増えるのでは?と、エビデンスなどない感覚ですがそう感じています。
ただ、今は見ていないだけで数年後にはどハマりしていた…なんてことも十分あり得ますね。
その時は僕が恋愛体質ぽくなったか、コンテンツが究極に面白いかのどちらかです(笑)
効率化された社会が生んだ、新しい恋愛の楽しみ方
社会はあらゆるものを効率化してきました。
移動は速くなり、買い物はワンクリックになり、仕事はオンラインで完結する。
恋愛もその流れの例外ではなく、今後はAI彼氏・彼女との関係が結婚にまで発展すると予想する専門家さえいます。
遠回りや感情の曖昧さなどの非効率性は避けられ、失敗の可能性はできるだけ排除されるのは当然のこと。
しかし恋愛とは本来、非効率そのものだったのも事実です。
偶然出会い、思い通りにならず、相手の気持ちも分からない。
その不確実性があるからこそ、人は深く感情を動かされてきた。
もちろん全てが失われたわけではないですが、やはり前よりもぐっと減った気がします。
恋愛をしない人が増えているという話もよく耳にします。
だからこそ、日常では手に入りにくい恋愛感情を、手軽に・そして安全に受け取れる恋愛リアリティー番組が求められる。
恋愛のミニマル化、その副作用として生み出された新しい娯楽です。
流行っているというより誰かの経験を視聴することが根付いた証拠なのではと。
だから恋愛リアリティー番組はこれからも、加熱し続けるのだと思います。